ひどい咳が続いて横隔膜の痛みと頭痛で目を覚ます生活が続いています。これでは歩く病原体だ!「お前今日は残業するな休日出勤するな、したら給料減らすからな」優しい言葉をありがとう皆さん。周囲に迷惑をかけて助けてもらって、ああ自分は自分で願うほど体力も知力も根性もないんだなあと定期的に確認させられています。弱すぎだ。
熱に浮かされながら、こんな風に倒れるのは身体がストッパーをかけてくれているのかなあとも思いました。精神より先に身体に限界が来てくれるのはありがたいとも言える。お陰様で心の風邪には今のところ無縁だし、って周囲を見回してみると、メンタルヘルスの人々は身体と心の両方を痛めている人が多いではないか。おお気をつけないと予備軍入りだ。身体だったら一週間で回復するけれど、心は治癒するのに時間がかかりそうだからなあ。

そんなわけで薬漬けでぼうっとしたままバスター・キートン傑作集を見ています。無表情のキートンの超絶体技は何度見ても最高です。ギャグの間合いやタイミング、仕草の面白さについてはチャップリンが天才的だと思うのですが、キートンが小さな身体を最大限に走らせ・倒し・飛ばし・転がす、その美しさを見ていると、笑いながらも不思議と心を動かされます。

バスター・キートン傑作集(1) [DVD]

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これがレンタルビデオ屋に置かれるようになるとは良い時代だ!キートンに惚れた二十歳の頃にはチャップリン以外の喜劇はどこにも置いていなくて、マルクス兄弟が見たいと思っても衛星放送を待つくらいしかなかったんだよなあ。
しかし今にして思うに、二十歳の自分はキートンだの山中貞雄丹下左膳大河内傳次郎)だの李白だの中島敦だのと、過去の人に夢中になってしまって誰とも共感を分かち合えないという哀れな状態だった。テレビもアニメもゲームも興味ない変則オタクだからなあ。「24」「チャングム」が大変面白いらしいので見てみたい、とか今時言い出すくらい時流から遅れていますよ。
今は姜文周星馳ファンの同志がいるし(新作はまだかまだか)、ネット上で「光良いいねえ品冠いいねえ」と分かち合えるから幸せだ。あとは戴敦邦ファンサイトとか中国古民居迷とか呉友如全作品翻訳とか、そういう素敵な場所を見つけられたら言うことはありません。自分で作りたいところですが、進んで灯りを点すにも、手が回らないんですよ。同志いないか同志。