謹賀!そして山中貞雄監督!

いやもう正月って三日じゃ全然足りませんね、あと十日くらいあってもいいと思うね。凧揚げも百人一首もできませんでしたが、素敵な御酒を沢山いただきました。「禄乃越州」の澄み具合はちょっとやりすぎではないですかうまいうまい。水のようにさらさらと、満足満足。さあ年賀状を書こうかな、って遅すぎますかまあ許せ、だって山中貞雄映画祭が!
生誕百年記念上映、勿論通いましたよシネ・ヌーヴォ!3回券2枚では足りませんでした。7回見たのかな、いやー良かった本当に良かった。学生の貞雄さんが辞書に描いたパラパラ漫画、カメラワークや殺陣がすごくて、よくこんなものを描いたもんだとにこにこ笑いながら見てしまいました。あの人は映画を撮るために産まれたんだな、間違いない。現存三作がどれも素晴らしく、喪ったものの大きさに溜息をついてしまいます。開封で亡くなったんだよね…。そういえば中島敦さんも2009年が生誕100年だったんだよなあ。

初めて山中作品に触れた二十歳の自分は『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』の左膳@大河内傳次郎にベタ惚れして何てキュートな剣客かと転げ回っていたものですが(今見ても言葉と裏腹な行動があまりに可愛らしく、殺陣の格好良さに、声も素敵だなあともう私は)、今回は更に『人情紙風船』の髪結い新三の胸を張った潔さに惚れ、『河内山宗俊』の金子さんの飄々とした姿と覚悟した瞬間の美しさに胸を衝かれました。『紙風船』も『河内山』も軽妙な会話がまた良いんだよなあ。

そして何度見ても『河内山』の原節子の可憐さはとんでもないです、古今東西の映画の中で「最も守ってあげたい人」不動のナンバー1です。これまた二十歳の自分がお浪さんのあまりの可憐さに拳を握ったことをよく覚えています。通常、小娘には欠片も興味のないわたくしですが、あのけなげで愛らしい娘さんには一発ノックアウトされました。身を捨ててでも守ろうとする金子さんと河内山の親分の気持ちが実によくわかる。あの娘さんのためなら私だって一肌脱いでやるよ、と今回もまた思いました。素晴らしい俳優陣と不世出の監督が作り出した幸福な映画です。ああ山中貞雄監督が長生きしてくれていればなあ戦争がなければなあ、せめて失われたフィルムが一本でも発見されたらなあ!

紙風船』と『河内山』に対して「暗い話だな」という記憶しか残していなかった前回は一体何を見ていたのか。そう思うと、成長とは言わぬまでも目線が違ってきているのだなと、年齢を重ねた喜びを感じます。後戻りなんて絶対したくないな。去年の自分より今年の自分の方がわずかなりとも変わっていけますように、ようしやってやろう。今年は良い年ですよ!

興奮さめやらずに字幕付きDVDを鑑賞。「俺はまどまどしい奴ァ大嫌いだ」って左膳の兄貴、どういう意味ですか。「しつこい」「細かい」「じめじめした」「たどたどしい」を足して割った感じかな。「金の話と喧嘩は大きい方が面白い」と言いながら、登場人物の誰もが本気で百万両を手に入れようとしているわけではないところがまた好きなんですよ。

山中貞雄日活作品集 DVD-BOX

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そうそう、『ONEPIECE』0巻が手元に2冊、つまり大いに楽しんだわけですがそれはさておき、尾田さんのコメント絵が左膳なのが嬉しくてですね!あの人絶対『百万両の壷』を見たね気に入ったね好きだろうね。人を楽しませようとする書き手があの作品に惚れない筈がない。言い切ってしまうよ、だって山中貞雄監督だよ、映画の申し子だよ!

まあ少し落ち着け。えーと、仄聞するに一年の計はどうやら元旦にあるとやら。だとしたら今年は創作年ですね。お互い頑張ろう。
仕事もやってやるぜ、いつか私は今の上司である係長のように、決断力と包容力を持って部下を庇える人になりたいよ。どれだけ助けてもらっているか、もう感謝してもし足りない。このご恩を後輩に還元するんだ。人に優しく!
では良いお年を!